個人事業で建設業許可をとった場合、許可は個人に与えられたものとして承継はできません。

建設業許可で、一番大変なのが経営業務の管理責任者(以下、経管)の要件である、経営経験年数です。これは年数がたつのを待つしか手段がないからです。ですから経管の要件さえ満たせれば、他は何とかして取り直せばいいのです。

法人の場合、たとえ家族経営だとしても、後継者を役員登記して常勤させておけば5年ないし6年後には、経営業務の管理責任者(以下、経管)になるための要件を満たす事ができ、変更届を提出すれば経管になれますし、許可番号も変わらず、承継は実にスムーズです。

その点、個人で建設業許可を取った場合、経管になるための要件を満たしているのは、通常「事業主」1人だけです。
事業主のご子息は、実際には責任ある地位にあり経管業務の補佐を行っている事も多いのですが、それを証明するてだてがなければ、あらためて許可を取ろうにも、5年ないし6年はそれができなくなります。

その為の救済措置として限定的ですが方法があります。

事業主が死亡又は高齢・傷病によるやむを得ない引退の場合、補佐経験者(確定申告書の専従者給与、給与支払の内訳で名前を記載してあった場合)事業承継後5か月以内であれば、経管の要件を満たし、新規の許可申請ができるというものです。(許可番号は引き継げません)
ただし、補佐した経験で経管となることができるのは、事業主が許可を持っていた業種のみです。

もっと、法人の役員登記のような有効な手段はないのでしょうか?
1つだけ、経管の要件を満たす手段として使えるのが「支配人登記」です。

支配人とは、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する商業使用人で、商人(事業主)が支配人を選任したときは、その登記をしなければなりません。(商法第22条)それゆえ、そういう立場にある者がいれば登記をすることが求められています。

この支配人登記をすることにより、営業取引上対外的に責任ある地位にあって、建設業の経営業務を総合的に管理する者であることが公示され、その結果5年ないし6年間の経験を積むことで支配人に経管の資格ができ、次の代の建設業許可もスムーズに取得できるようになります。

また個人事業の後継者にならなくても、ご子息が独立して、新たに自分で建設業許可を取る時も、この経管の経験は有効です。

以上のように、使い方次第では有効な制度である個人事業の支配人登記ですが、一般的に行われるものではなく、実際にはほとんど行われていません。

しかし、ご子息が建設業に携わっている場合、将来の建設業許可取得の可能性が少しでもあるのなら、ご子息の将来のために、支配人登記の手続きをしておかれることをおすすめします。